• イタリアの外科医がロシア人男性に「初の人間頭部移植(HEAVEN)」を計画

    

    イタリアの外科医がロシア人男性に「初の人間頭部移植(HEAVEN)」を計画

    これまで移植手術によって多くの人々の命が救われてきました。

    今までに移植されてきた部位は肺や心臓、四肢や顔面に至るなど様々ですが、未だに行われたことのない部位もあります。

    それは頭部です。

    まず、頭部を移植するということはどこかのSF小説や映画でありそうなものですが、そもそも多くの人々は現実世界で実際に行われるとは考えていないでしょう。

    しかし、イタリアのとある外科医のチームによって近年の内に頭部移植が本当に予定されており、その手術は難病を患っているロシア人男性が受けることになっています。



    First human head transplant could happen in two years
    http://www.newscientist.com/article/mg22530103.700-first-human-head-transplant-could-happen-in-two-years.html#.VSoXp5M68lk

    Russian Man Will Become Subject Of First Human Head Transplant Ever Performed
    http://www.iflscience.com/health-and-medicine/head-transplant-volunteer-might-face-fate-more-terrifying-death

    Doctors planning the first human head transplant
    http://www.geek.com/science/doctors-planning-the-first-human-head-transplant-1620076/
    2015-04-11-10


    世界初の頭部移植手術


    世界初の頭部移植手術が行われる予定の患者はロシア人のValery Spiridonov(30)氏。

    彼は脊髄性筋萎縮症(ウェルドニッヒ・ホフマン病)という全身に障害が及ぶ遺伝および神経原性の筋萎縮症を発症しています。

    この病気は根本的な治療法が無く、リハビリや人工呼吸器などによる対症療法で緩和させるしかありませんでした。

    つまり、現在のところ根本的に障害を解決するには頭部を健康な肉体に移植するしか無いのです。

    Spiridonov氏はDailymailのインタビューに対し「もちろん怖い。でもそれだけでなく非常に興味深いものだと思っています。あなたは私には多くの選択肢を持っていないことを知るべきであり、もしこのチャンスを利用しなければ私の運命は非常に悲しいことになります。そして私の病状は毎年悪化しています。」と心中を述べています。


    2017年までに手術準備を完了させる予定


    2015-04-12-2
    photo by Zdenko Zivkovic

    一瞬狂気とも思えるこの手術を考案したのは、イタリアのエリート外科医であるSergio Canavero氏。

    彼の頭部移植考案自体は2013年から存在しており、彼は2017年までに手術の準備を完了させようとしています。

    そしてこれは2015年6月にアメリカ、メリーランド州のアナポリス(Annapolis)で開催されるannual conference of the American Academy of Neurological and Orthopaedic Surgeons (AANOS) にて、このプロジェクトが発表される予定となっています。

    なお、この論文はタイトルのThe head anastomosis ventureの一部文字を引用して「HEAVEN」と呼ばれています。


    頭部移植の歴史


    頭部移植の歴史は少し古く、1954年にソ連の外科医Vladimir Demikhov氏による移植手術が最初であると考えられています。

    この手術では子犬の頭と前足が別の犬の背中の上に移植されることをはじめ、他にも様々な方法が彼によって試されました。

    しかし、移植された犬は2日から6日の間というわずかの時間しか生存出来ませんでした。

    それから十年以上が経過し、更に進んだ頭部移植手術が行われたのは1970年。

    オハイオ州クリーブランド(Cleveland)にあるケースウェスタンリザーブ大学(Case Western Reserve University)医学部、Robert White博士率いるチームによって猿の頭部が別の猿の首に移植されました。

    ただ、手術自体は成功したものの脊髄が上手く機能しないために、移植された猿は体を動かすことが出来ず、人工的な支援を受けなければ呼吸すらままならない状態となっていました。

    術後、頭部を移植した猿は免疫システムが頭部を拒否するまで生きていましたが、それでも9日間しか生存出来ていません。

    この事から人間に頭部移植手術を行うのは非常に困難であると多くの人々は考えていますが、Canavero氏は関連する外科技術の進歩によって「現在は実現可能であると思っている。」と話しています。

    なお、頭部移植手術に興味を持っているのはCanavero氏だけでなく、中国のハルビン医科大学(Harbin Medical University)のXiao-Ping Ren氏がマウスによる頭部移植に成功しており、その研究を発表しています。

    Ren氏は近い内にCanavero氏の研究に基づき、マウスおよびサルにおいて実験を行う予定です。


    大規模な手術


    2015-04-12-3
    photo by Phalinn Ooi

    頭部移植手術はSurgical Neurology International誌で発表された論文(前述した2013年の論文)の手順に従い、Canavero氏がSpiridonov氏の首の着脱を担当することになっています。

    Canavero氏の予想ではおよそ36時間の手術時間および150人の医療スタッフが必要になると考えられており、先述したAANOSのプロジェクトの発表で協力者を募る考えを持っています。


    手術内容


    まずSpiridonov氏の頭と新しい体は、細胞が酸素無しで生存出来る時間を延長するために冷却が行われます。

    そのあと医師は首の周りの組織を解剖し、脊髄を切断する前に首を通る主要な血管を特殊な小さい管に接続します。

    次に脊髄が切断され、Spiridonov氏の頭はすぐに新しい体へと移動し、そして結合させます。

    この際、細胞や結合組織の結合を促進させるためにポリエチレングリコールという化学物質を注射します。

    その後は縫合を行い、患者が動かないように3週間から4週間昏睡状態を保ちます。

    なお、患者には電極も移植されており、脊髄に規則的に電気刺激を与えます。

    これには理由があり、研究によると定期的に電気刺激を与えることで新しい神経接続を強化出来る可能性があると示唆されているためです。


    術後1年以内に歩行が出来る可能性


    2015-04-12-4
    photo by Michael Dorausch

    Canavero氏は「術後、患者が目覚めると自身の力動く事ができ、同じ声で話すことも出来るだろう。」と予測しています。

    更に彼は「理学療法(リハビリ)によって1年以内に歩行も可能になるだろう。」と述べています。

    恐ろしくも魅力的な手術ですが、既に複数人が彼の元に手術を求めに志願してきたとのことです。

    そして今回ロシア人の男性が選ばれました。


    今後の課題


    先程の頭部移植の歴史で説明したように、手術は免疫システムが頭部を拒否した場合を考慮しなくてはならないのでしょうか。

    AANOSの会長William Mathews氏は「これが今日の大きな問題になるとは思いません。足、心臓、肺移植など、大量の組織の受容を行うために薬を使用できるので、頭部移植も扱いやすいはずでしょう。」と話し、免疫拒絶反応を予防出来る方法は確立出来ていると指摘しています。

    ただ、米国脳外科学会(AANS - American Association for Neurological Surgeons)の次期会長、Hunt Batjer氏はCNNのインタビューで「私はこれを望まない。誰にも私に対してこの手術を行わせないし、それには死よりも悪いことが多くある。」と手術を拒絶しています。

    彼によると気道、背骨および主要な静脈と動脈は接合出来ても、脊髄は上手く接合出来ず、手術を受けた患者は動くことも呼吸することも出来なくなると言います。

    また、ニューヨーク大学で医療倫理を担当しているArthur Caplan博士はCanavero氏の手術に対して「馬鹿げている。」と考えており、手術の際に抗拒絶薬を大量に使うことは患者の体に大きな負担になるだけでなく、新しいパーツが機能しないと指摘しています。

    けれども、Canavero氏は「それでも我々はこれを行うことが出来る。」と主張しています。

    ちなみに、Canavero氏は大規模演説会のTEDで頭部移植手術に関する演説を行っていました。

    Head transplantation -- The future is now | Dr. Sergio Canavero | TEDxLimassol
    https://www.youtube.com/watch?v=FV5pOO5Mt64


    術後の容態も含めて完全に成功すれば前代未聞の功績となりますが、倫理的な問題や技術的な問題もあるため、非常に危険な手術であるのは誰の目にも明らかでしょう。

    eyecatch by JoséMa Orsini

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