• 「タランチュラの毒」はあなたの関節を保護出来る

    

    「タランチュラの毒」はあなたの関節を保護出来る

    毒は基本的に我々に有害で、場合によっては死に至らしめる時もあります。

    しかし、モノは使いようで使い方によって、毒が有益な存在へと変貌します。

    例えば、ボツリヌス菌の毒素は我々に致命的な毒性を持っていますが、これをボトックス注射すればガンの進行を抑えるということが判明しており、更にヘビやサソリ、ハチの毒もガンに効果があることも研究によって明らかで、まさに毒をもって毒を制すことになっています。

    世界最大のクモでもある「ゴライアス・バードイーター」も属しているオオツチグモ科の通称「タランチュラ」にも一定の毒がありますが、これもまた利用することで人間の軟骨を保護する作用があることが研究で判明しています。



    How tarantula venom might protect your cartilage
    http://www.futurity.org/cartilage-tarantula-venom-801512/
    2014-11-14-4

    軟骨がすり減ることは、ふとした弾みでケガを引き起こす原因となってしまいます。身体の継ぎ目を接続している軟骨中の細胞は負荷によって痛みを引き起こし、異常があることを感知させています。

    このプロセスはどのように働いているのか明らかではありませんが、科学者は軟骨細胞を一斉に死滅させるように働く1組のイオンチャネル経由で起こると考えられています。

    Duke大学の研究によると、タランチュラ毒中の物質がこれらのチャネルの作用をブロックし、細胞を死滅させないようにすることが判明しました。

    タランチュラ毒で見つかった分子は「ペプチドGsMTx4」と呼ばれ、およそ3年ほど前にBuffaro大学の研究者、Frederick Sach氏が発見したものです。

    これは以下の軟骨損傷の組織モデル(赤)において軟骨細胞を死から保護します。
    2014-11-14-5
    photo by duke university

    この研究は米国科学アカデミー(the National Academy of Sciences)にて掲載されており、この新たな発見は、軟骨損傷に伴う痛みを関節を保護、防止するための薬物開発に繋がる可能性があります。

    Duke大学の整形外科学教授で今回の論文の上級著者の一人、Farshid Guilak氏は「この研究についての最も興味深いことは、一般的な感覚細胞として考えていない軟骨中の細胞が、複数の感覚系を持っていることを示していることでした。」と述べています。

    そして、Duke大学医学部神経科、麻酔科と神経生物学の准教授、Wolfgang Liedtke氏もまた「これらの細胞は、それらの機械的環境を感知する能力において非常に複雑です。」と話し、軟骨細胞には複雑な要素が多いことが研究で明らかになったようです。

    関節損傷は、何百万人もの人々に影響を与え、スポーツ傷害、および感染症で軟骨はダメージを受けています。一度ダメージを受けると軟骨は治癒が遅く、また、軟骨細胞が成熟するとその細胞は分裂することはありません。

    ただ、身体活動は軟骨に良いことは判っており、Guilak氏とLiedtke氏そして彼らの共著者によると、軟骨細胞に穏やかな機械的刺激を加えることは、イオンチャネルTRPV4(Transient Receptor Potential Vanilloid 4)が活性化して、自身の健康を促進することを発見しています。

    更に、TRPV4チャネルを欠くマウスは、変形性関節症を発症する可能性が高いことをも判明しています。

    2014-11-14-8
    photo by Aidan

    新しい研究では、より激しい機械的ストレスへの軟骨細胞の応答を調査しており、その結果、軟骨細胞に「Piezo1」と「Piezo2」という2つの機械的感知イオンチャネルの役割を発見しました。

    Piezoチャネルは直接機械的な力を伝達する能力を持っています。例えば、Piezo1は膀胱が満たされていることを感知する機能を持っており、Piezo2は優しいタッチを感知することが出来ます。

    しかし、軟骨細胞でのPiezoチャネルの働きはこれらと異なり、優しい圧力ではこれらは反応せず、軟骨損傷を引き起こす圧迫に対して両方が反応していたことが発覚します。

    研究者は、Piezoチャネルを阻害することが細胞死を妨げるかどうかを確認したかったこともあり、ペプチドGsMTx4を利用した結果、Piezoチャネルの機能を遮断して軟骨細胞を保護する効果が判明したのです。

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    photo by Minnesota Historical Society

    なお、Liedtke氏は細胞表面に留めることが出来る化学物質を使うことで、GsMTx4の軟骨細胞保護効力を更に押し上げることが出来たと述べています。

    今後科学者らは、これらのチャネルおよびGsMTx4の役割がどのように機能しているかをより明らかにすることを計画しており、関節痛あるいは関節損傷の治療に用いることができるかどうかを研究する予定です。

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