• まるで貧困ビジネス? 奨学金という「蟻地獄」とその「闇」

    

    まるで貧困ビジネス? 奨学金という「蟻地獄」とその「闇」

    奨学金制度とは、金銭的に余裕が無いが、勉学に励みたいという方のために一定の金額を貸与あるいは給付される制度です。

    この奨学金制度のおかげで、貧困層でもよほどの事が無い限りは一定金額を提供してもらえるため、大学や専門学校等へ進学することが可能となります。

    卒業後、奨学金を貸与してもらった人は奨学金の提供元へ返済を開始しなければなりません。

    近年、この奨学金に関して大問題となっていることが「返済」という点です。



    未返済者への訴訟増大


    奨学金返還訴訟、8年で100倍 機構が回収強化
    http://www.asahi.com/articles/ASG843SQ1G84UTIL00M.html

    朝日新聞によると、日本学生支援機構(旧日本育英会)が2012年度に起こした未返済者への訴訟は6193件に上り、8年前のおよそ100倍にまで急増していることが判明しました。


    2014-08-11-2
    photo by Chris Potter


    背景には未返済者(平成22年度で34万人)が多いため、債権回収のために力を入れざるを得ないということになっています。

    しかし、この不況の状況下ですから、卒業しても未就職や金銭の少ない派遣社員という場合が少なからずあります。

    そのために同機構には返済猶予制度がありますが、これは1年ごとに申請する必要があり、何らかの理由で申請を忘れた場合には「延滞」となってしまいます。

    この延滞には「延滞金」があり、年10%が返済分にプラスされてしまいます。

    更に、奨学金には「無利子」「有利子」が存在しており、有利子で借りた場合は当然利子が発生します。

    万が一、猶予申請をしていなくて、更に延滞をしている場合、最悪の場合は財産の「差し押さえ」にまで発展します。

    また、延滞したことで金融機関の「ブラックリスト」に載ってしまい、クレジットカードを作ることも困難となります。


    貧困ビジネス


    2014-08-11-3
    photo by Simon Cunningham


    元々借りたのは現在の返済者ですから、当然金銭の返済義務は発生します。

    返済されたお金はこれから進学する後輩達のために使われますので、必ず返さなければなりません。

    しかし、奨学金という名目で学生を支援している以上、強制的に金銭の回収を行うのはあまり褒められたことではないでしょう。

    「返済能力があるのに返さない」人物に訴訟を行うのは当然ですが、「返済能力がないから返せない」人物にまで一括で訴訟を起こすのは良いやり方ではありません。これは貧困ビジネスと言われても当然です。

    その極めつけが回収金の充当手順です。

    日本学生支援機構は「返還金がこれからの学生の奨学金の原資(資金源)となる」と述べています。

    その場合、通常は返済金は元本(借りたお金本体)から減らすのが当然でしょう。

    しかし、日本育英会から日本学生支援機構になった2004年以降、回収金は元本より先に延滞金と利息に充当されるという方針になっています。

    つまり、「返しても返しても返済すべき借金自体が減らない」という悪循環に陥ってしまいます。

    これは学生優先ではなく利益の追求であり、債権回収会社や金融機関の利益を優先しているのは明らかです。

    それを裏付けるのは、債権回収を行っている業者(サービサー)へ支払われている手数料です。

    債権回収には日立キャピタル債権回収株式会社エム・ユー・フロンティア債権回収株式会社などが行っており、これら企業が回収した債権の内、一部はこの企業に「手数料」として支払われます

    互いにおよそ20億円程の債権を回収していることから、手数料は1億円程。

    つまり、1億は利益を得ることが可能なのです。


    日本学生支援機構が退いた裁判


    2014-08-11-4
    photo by Phil Roeder


    多くの訴訟の内、一部の訴訟に関しては明らかに日本学生支援機構に非がある点もあります。

    奨学金返済 訴え取り下げ(2014 5/21)
    https://ja-jp.facebook.com/147536872115274/photos/pcb.257723091096651/257721311096829/?type=1

    奨学金返済 取り下げ
    https://ja-jp.facebook.com/147536872115274/photos/pcb.257723091096651/257721324430161/?type=1

    奨学金 過去の延滞も猶予
    https://ja-jp.facebook.com/147536872115274/photos/pcb.257723091096651/257721231096837/?type=1

    これらの記事によると、日本学生支援機構は、2012年10月から延滞していた札幌市内の20代女性に約170万円の一括返済の訴訟を起こします。

    女性は2003年7月から2007年3月にかけて月額5万3千円の奨学金を借りており、2007年10月から返済を開始していました。

    しかし、生活の困窮によって返済の猶予を同機構に申請し、2011年10月には猶予が認められていました。

    ただ、女性は猶予1年目が終わった2012年の10月以降、猶予の申請をしていませんでした。

    そのため、日本学生支援機構は回収のために2014年1月に支払い督促を送り、同年2月に訴訟を起こします。

    訴訟の結果は日本学生支援機構側の訴え取り下げでした。

    理由としては、同機構が定める細則に「過去に遡って奨学金の返還期限を猶予出来る」規定(第4条)があったためです。

    日本学生支援機構 規程等
    http://www.jasso.go.jp/jigyoukeikaku/

    返還期限の猶予に関する施行細則(PDF:111KB)
    http://www.jasso.go.jp/jigyoukeikaku/documents/saisoku_17_03.pdf


    また、機構から女性へ返済猶予についての情報提供や説明が無く、返済への相談を持ちかけることもなかったことも原因の一つです。

    これによって日本学生支援機構は訴えを取り下げ、女性は返済の猶予をすることが可能となりました。

    裁判所は前例を優先します。

    もし、同機構から訴えがあった場合、この前例によって返還猶予を認めさせることができることが可能かもしれません。

    なお日本学生支援機構のHPには、この裁判によって新たに項目が増えています。


    海外での奨学金問題


    2014-08-11-5
    photo by Sarah


    ちなみに、海外でも奨学金の問題は起きています。

    アメリカの大手民間学生ローン企業「サリーメイ」は元々公的な機関でしたが、97年に民営化がスタートします。

    その結果、利益追求に走ってしまい、多くの支払い困難者が誕生してしまうことに繋がります。

    借金は1000万を超える場合があり、一部では借金を払いきれずにホームレスと化した学生もいます。


    アメリカ政府はこれを危惧し、学生ローンの規制を強化します。

    政府の規制と景気の後退を受け、取り立ての売上を多く得られなくなったサリーメイは、最終的に大規模な人員削減を行っています。

    しかし、これでも現状は解決しておらず、2013年の米国内の学生ローン債権は9860億ドルに達しており、自動車やクレジットカードのローンを上回っています


    早めに対策をとっておくべき


    2014-08-11-6
    photo by Chris Potter

    借金というのは自己責任が伴います。

    お金を借りた以上、返済の義務があるのは当然です。

    どうしても返済できない場合は最後の手段として「自己破産」という手はありますが、将来のために奨学金を借りたのに、将来を犠牲して自己破産するのは余りにも皮肉な話となってしまいます。

    そもそも自己破産した場合は自己所有の家や車、有価証券など価値のある物が全て失われる(差し押さえ)ため、本当に無一文となってしまいます。

    自己破産後にも制限があり、当然クレジットカードの認証は困難になりますし、ローンも組むことが難しくなります。更には一定期間、一部の職業に就けない(警備員や建築士、弁護士や会社役員、人事院、公安などの特殊公務員等、他人の財産の管理に関与する職業・職務)ようになってしまいます。現在、その該当する職に就いている場合は当然退職しなければなりません

    最悪なのが「連帯保証人」をも巻き込んでしまうことです。

    連帯保証人には自己破産による影響を受けないため、債務が全て連帯保証人に請求されます。

    信用して保証人になってくれたのに、その人の人生も巻き込んでしまい、債務額が多ければ、連帯保証人も同じく破産する必要があることも考えられます。

    現在安定している職業ならば、個人再生を使うのも一つの手ですが、こうならない内に対処しておくことがとても重要です。


    奨学金は踏み倒してはならない


    2014-08-11-8
    photo by Keith Ramsey


    奨学金は決して踏み倒そうとはしないで下さい。

    日本学生支援機構の奨学金には返済猶予あるいは減免があります。

    今は払えないと思ったならば、必ず申請して下さい。

    親にやってもらったから~、話を聞いてなかったから~だから分からない、などと言って、申請もせずに放置し続けることは「自分の首を絞める」ことに繋がります。

    受け身ではなく、自分で行動することが大切です。何かが起きてからでは手遅れになってしまいます。

    申請をして認証されている間は、債権回収訴訟が起こされることはまずありません。

    もし、訴訟を起こされそう、あるいは申請を放置していてどうすればいいか本当に分からない、などがあれば、真っ先に弁護士等に相談して下さい。金銭に余裕のない方は法テラスならば無料の法律相談窓口がありますので、利用して下さい。


    現状の「借りる」リスクの高さ


    2014-08-11-7
    photo by Nick Ares


    現在の奨学金は、借りるにはリスクが大きすぎます。

    まだ何も知らない学生に将来のためと銘打ち、巨額の金銭を貸与させることは現実的ではありません。

    「全て自己責任」と声高に攻め立てる人も少なくありませんが、不純な動機のために借りた訳ではないため、すぐに切り捨てるのは冷酷極まりないことです。

    これからの国を作っていくのは若者達です。

    自立のために救済していくことこそが、後の国力増強に繋がります。

    しかし、機関は彼らのために救済手段を用意する必要があるのに対し、逆に債権回収の強化を行っていることから、むしろ首を絞める結果となっています。

    教育は憲法にあるように、国が進んで行っていかなければなりません。

    にも関わらず、OECD加盟国の内、「日本だけ」が「大学授業料が有料」かつ「給付型奨学金がありません」

    給付型奨学金に関しては文部科学省が予算を組み込みましたが、財務省が却下しています。

    数十億という金銭を海外に提供しておきながら、自国民には一銭も渡すことはない。

    もはやこれは恥であり、この状態では健全な未来を作っていくことは厳しいでしょう。


    ・関連リンク

    質問主意書(参議院)
    http://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/syuisyo/185/syuh/s185054.htm


    奨学金「取り立て」ビジネスの残酷(選択)
    http://www.sentaku.co.jp/category/culture/post-2201.php

    photo by Nori Norisa

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